こんにちは!北里アクアリウムラボ13期の迫田です。
少しずつ涼しくなってきましたが、皆様いかがお過ごしですか?
早いもので9月ももう終わり、我々13期の引退まであと2か月程となりました。13期生が着々と最後のラボブログを書き上げていく中、ついに私にもその番が回ってきました。
最後ということで、今回は私がいつかブログで書こうと思っていた
「海洋ゴミ」 について、少しお話できればと思います。
まずはこちらの写真をご覧ください。

こちらは神奈川県某所で撮影した海の様子になります。こちらの写真をみてまず目を引くのはやはり、一面に広がるゴミですね。撮影当時の私はこんな浮いているのはあまり見たことがなかったため、とても驚いたのをよく覚えています。
私自身、大学入学前まではニュースやSNSで数えきれないほど「海洋ゴミ」を耳にしてきましたが、「大変なこと」というイメージしかなく、イマイチ現状を理解していませんでした。しかし、本学部に入学し、海に関わっていった中で様々な現状を知りました。そこにはニュースやSNSは教えてくれない「ゴミに溢れる海の現実」がありました。
今、多くの方面から「ゴミを減らすためのアクションを!」という話は耳にしますが、現状を伝えているものは少なくなっているように感じます。
そこで本ブログでは私が見てきた「海洋ゴミ」の現状を、少しお話できればと思います。
そもそも「海洋ゴミ」とはどこから現れているのでしょう?
答えは単純、
「我々人間の生活圏」からです。
海洋ゴミの約8割は、陸上で発生したゴミがしっかりと廃棄されなかったり、ゴミ袋がカラスに荒らされたりと、色々なことが原因で海に流され、そのまま分解されずに海に残留することで生まれます。
先ほどの写真を見ても分かる通り、海洋ゴミのほとんどは我々が生活する中で生まれた家庭ゴミからでています。故意で捨てたものではないにしろ、私たちが生み出してしまっているとは悲しい現状です。
それでは次にこちらの写真をご覧ください。

こちらも私が以前、神奈川県某所で見つけた海洋ゴミの写真です。こちらのゴミ、よく見てみると中国語のパッケージですね。
そう、日本にいるからといって日本のゴミだけが海にあるわけではありません。
ゴミは広い海を渡り、
分解されることなく遠い国へと渡ってしまうこともあるのです。これは逆もまたしかりで、多くの国で日本からのものと思われる海洋ゴミが見つかっています。
なぜ世界的に問題になっているのか、少しは納得していただけたと思います。一つの国からゴミを流すだけで、地球上の海を持つすべての国に影響をもたらすのです。
では次にこちらの写真をご覧ください。

こちらは広島県某所の砂浜の写真です。
写真に写っている白いツブツブしたようなもの…これ何だかわかりますか?
実はこちら、カキの養殖筏のフロートが破損してでた
発泡スチロールの破片です。
さきほど海洋ゴミの多くは家庭ごみ由来であるとお話させていただきましたが、このように養殖場、つまり漁業由来のものも存在します。
有名な話で、「ゴーストネット」と呼ばれるものがあります。ゴーストネットとは、海に廃棄された漁網のことで、それが分解されないまま海を漂い、ウミガメなどが絡まり身動きが取れなくなってしまうことがあります。
海に深く関わる職業だからこそ、海を汚してしまうこともあるのです。このような現状を漁業者の方々も深刻に受け止め、使用する道具の生分解性プラスチックへの置き換えや、漁業の中ででたゴミを海に廃棄せず持ち帰り、分別・再利用する取り組みが進んでいます。
さて、次にこちらの写真2つをご覧ください。

こちらはカゴカキダイ
Microcanthus strigatus の幼魚

こちらはメジナ
Girella punctata の幼魚です。
この2匹には発見時のとある共通点があるのですが、それは何でしょう?
正解は2匹とも
「海洋ゴミに身を潜めていた」という共通点です。
幼魚の多くは、大きな魚や海鳥からその身を守るために枯れ葉や流れ藻に寄り添い、その身を潜めます。しかし、海洋ゴミが増加し続ける今、その身を潜めるためのものが「ゴミ」に移り変わりつつあります。
ゴミを利用するのは幼魚だけではないようです。
こちらの写真もご覧ください。

こちらも神奈川県某所で撮影した写真です。よく見るとレジ袋の上に魚が乗っていますね。実はこの魚、浮いているゴミ袋を停まり処として利用していました。
ゴミさえもうまく利用してしまうその姿には驚かされるばかりですが、果たしてこのままでよいのでしょうか?
私は海でこのような生き物たちの姿を見るたびに自分にそう問いただし、常に考えています。
私たちが生み出してしまったゴミだらけの海で、泣き叫ぶ生きものはいません。ただ訳も分からず巻き込まれてその命を落としたり、静かにその身をゆだねるものばかりです。
ゴミさえも生き抜くために利用する生き物たちの姿は逞しい事ですが、
本当にこの姿のままでよいのでしょうか?一度立ち止まって、まずは海の現状を見つめ、考えてみることから始めてみませんか?
海洋ゴミを減らすために出来るアクションはたくさんあります。海洋ゴミ問題は世界中で問題視されており、我々にもできるアクションは探せばいくらでもネットに溢れています。しかし、提案されるがままにその行動を起こす前に、まずは海と向き合って考えてみることから始めてみるのもいいかもしれませんよ。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。